もうすぐ

掴まらずに二本足で立ちそうな気配だ。


体調が悪くてぐったりと横たわる母Yのそばにやってきたゲンキ。
母Yの膝と肩に掴まっていたと思ったら「えええええ〜〜」と言いながら膝から手を離し、
肩からも手を離そうとする。
「見ててねえ〜〜」と言っているのか、ゲンキ。
見てるよ見てるよ、がんばって。
2回ほど挑戦して、あっさりあきらめる。
あきらめ早いね、キミ。
でも、すごい。突然やって来るんだね、こういう時が。
しばらく目が離せないな。
ひとり立ちの瞬間は絶対見逃したくない。


この日記のリンクにある「e-baby」からのアドバイスメールにも書いてあった。
「人生において、最初に立った瞬間の喜びにまさるものはない」んだって。
これまでの育児でやり残したことや後悔があったとしても、ひとり立ちの瞬間を一緒に共有することで、
それまでのミスはチャラになる、とまで書かれていた。
本当か。


最初に立った瞬間、赤ちゃんは必ず声を発するらしい。
その声が他のものと一体化する共感の気持ちを表していて、
そこで初めて赤ちゃんは「共感」という感情を持つのだそうだ。
だから、その瞬間を一緒に体験することで、親子の絆はかつてないほど強固なものになるという話。


でも、そんな理論より何よりも、ゲンキの人生で一度しかない瞬間を
母はしっかり目に焼きつけておきたいのだよ。
いよいよ人間になるんだなあ。
ヤバイ、見たら泣くかも。


夜になってから、会社の後輩だったキーヨ(仮名)が遊びに来た。
彼女は今も会社に在籍していて、独身を謳歌している。
昨年退社する直前まで同じ上司に仕えていたこともあり、ツーカーの呼吸が出来上がっているので、
ゲンキの風呂やら寝かしつけやら、何の気も遣わずにこなしてしまった。
ゲンキもあっさり寝てくれたし。
その間、すっかり晩酌モードで盛り上がる父Jとキーヨ。
ほとんど親戚だ。


母Yの日常を見て、やたらと感心しながら、結婚と出産に興味を持ち始めた気配のキーヨ。
いや、マジで早ければ早いほうがいいって。
何なら結婚は後で出産が先でもいいから。
おいらも産んでから、つくづくそう思ったもんね。
「結婚が後だとしても、相手を見つけるのが先だよ。何とかして」
それは自分で何とかして下さい。