初節句

こどもの日。ゲンキの初節句だ。


母Yには、子供の頃の「こどもの日」の記憶がない。
借家の一軒家に住んでいた頃、庭に高いポールがあって、鯉のぼりが泳いでいたのは覚えている。
ポールの先頭には、矢をかたどった輪型の風車がついていたから、
おそらく弟の鯉のぼりのために立てたものだったのだろう。
借家でも庭付きだったというのが、時代を感じるなあ。


そんなわけで、おいらは端午の節句に何をすべきなのか、わかっていなかった。
サチエや周りのママ友も、似たような感じだった。
とりあえず、出世魚を食べるとよいらしいという情報をサチエからゲット。
メインは、鰹のたたきに決定。
個人的に、柏餅は外せない。
せっかくだから、菖蒲湯もしたいぞ。
そんなこんなで、朝食後に商店街へ買い出しに。
途中から、父Jとゲンキも合流して、親子三人で初夏の陽気の中を買い物。
のんびりしていて楽しい。

それはそれとして、ゲンキの便秘がついに1週間の新記録を樹立してしまった。
買い出し後、ゲンキの便秘解消ドライブに行く。
ゴールデンウィークのラッシュを避けて、甲州街道を府中方面へ。
走り始めてから20分ほどで、まったりとした匂いが車内に流れる。
1週間ぶりだから相当臭うものだと覚悟していたのだが、かなりライトだ。
う〜ん、でもおしっこの臭いではないと思う。
食堂の広い駐車場に車を停めさせてもらって、点検。


「うわっ、これはやばい」
父Jが開口一番うめく。
うんち漏れをしているのかと思いきや、大人のモノに近づいているという意味だった。
色も濃くなり、粘度が強くなっている。
徐々に固形へと近づいている気配。
父Jが運転席のシートを使って、手際よくおむつ替えをしてくれた。
そのまま家へUターン。
のの字マッサージをしても、りんごのすりおろしを食べさせても、綿棒浣腸をしても、
まるでなしのつぶてだったお通じが、たった20分のドライブであっさり解消した。
自力のうんちが復活するまで、ドライブに頼るしかないかも。


ゲンキのお腹もすっきりしたところで、端午の節句の祝い膳を自分なりに用意した。
お赤飯、舞茸と豆腐のお吸い物、ワカメとキュウリの酢の物、中華ちまき
メインは、鰹のタタキにタマネギスライスと大葉をたっぷり添えて、ポン酢で。
甘味は、柏餅とちまき
ユウちゃん一家からいただいた、こいのぼりの和菓子も。
それなりに格好もついて、美味しい食事だった。
お食い初めの時は見ているだけだったゲンキだが、ここ数日食欲も旺盛なので、
実際に食べられるように、大好きな玉ねぎと豆腐・キャベツ・人参の裏ごしを用意する。
これが、10さじ分ほどペロッと完食。
便秘が解消された効果もあるのだろうか。
明日から2回食に移行したほうがよさそうだ。


食事だけでなく、節句のにわかディスプレイも、それなりに様になった。
父Jの実家から譲られた鎧と、曾祖母様から送られた手作りの鯉のぼりの色紙に、
花菖蒲を添えて飾る。
20余年来の友アンジーがドイツから送ってくれたテディベアにも、折り紙のカブトをかぶせてみた。
ゲンキは鎧に興味があるらしく、近くに寄っては手を伸ばすので、目が離せない。
親子2代で同じ鎧でお祝いができるのは、父Jのお母さんが丁寧に保存していて下さったおかげ。
ゲンキがもっと大きくなったら、父Jの幼少期の節句の写真を見せてあげよう。


食事の後は、しっかり菖蒲湯に浸かった。
初めてだったが、お湯がまろやかになった気がする。
興味津々で菖蒲に手を伸ばしたゲンキ、振り回して菖蒲の先端が顔に当たり、一気にテンションが落ちる。
自分でやったんだから、仕方ない。
それでも楽しい初菖蒲湯。


本当はヨモギや菖蒲を軒先に吊るすとか(厄除けの意味らしい)、
もっと伝統に則ったやり方はあるのだろうけれど、
親自身が核家族で暮らしてきた世代には、なかなか難しいのではないだろうか。
祖母も母も他界してしまっている私には、気軽に聞ける人もそばにいないし。
でも、こうして自分たちなりにアレンジして、古来からの節句をお祝いするのは楽しいし、気持ちが引き締まる。
ゲンキが生まれて、日本の伝統や和の心に強く惹かれるようになった。
これだけネットが普及している現代だ、知らないことは調べればいい。
1歳を過ぎれば、こういう大きなイベントは少なくなるだろうけど、
ゲンキには折に触れて日本の良さを伝えていきたいと思う。