チキンライスとラクカラーチャ

最近、体力の限界をひしひしと感じる。


とにかく、夜がキツイ。
ゲンキをお風呂に入れて、湯上りパイをして、寝かしつけた時点で自分的には終わっている。
うまくいけば午後9時だが、10時を過ぎていることもある。
それから何とか体に鞭を入れて、夕飯を作り、食べ、その間に洗濯機を回す。
洗い物、朝食の下準備、翌日に出かける用事があって父Jの仕事の来客がある場合は掃除もする。
これで大体午前2時。
それまでの間に、多い時は授乳が2回入る。
この日記を書こうと思うと3時は回る。
どれ寝ようと思って横になると、また授乳だったり。
そこでゲンキが寝てくれればいいけれど、朝5時から活動を始める日もしばしば。
何とか昼寝でカバーしたいところだが、結局出来ていない。


何とか倒れずに済んでいるものの、父Jいわく夜の母Yは相当機嫌が悪いらしい。
「せめて笑顔で接してくれないか」と言われたが、それは無理。
昼間は、結構頑張っているのよ。
でも1日の終わりが近づくにつれて、するべきことをこなすだけで精いっぱい。
やるべきことはしているのだから、笑顔までは勘弁して下さい。
おいら、マックでは働けないな。
スマイル¥0。有り得ない。
接客の仕事をしていた時は、どんなにきつくても笑顔を出していたけれど、
今は、ゲンキに対して感情をフラットに維持することで力を使い果たしている。


そんな折、ふとチキンライスが食べたくなった。
おいらが言うのも何だけれど、父Jのチキンライスはかなり美味い。
母Yが徹夜でふらふら仕事をしていた頃は、よく作ってくれた。
ああ、父Jのチキンライスが食べたいなあ。
ぽろりと呟く母Y。


今日は、ゲンキを寝かしつけて、そのまま母Yもうたた寝してしまった。
うたた寝というより、本気寝だった。
「お母さん」
父Jに起こされる。
げ、午前0時回ってる。
ゴメン、ご飯作ってなくて。
「もう食べた」
あああ、すみません、ほんとすみません。
「お母さんの分もあるよ」
食卓に座ると、ほかほかのチキンライスが出てきたよ。
ううう、美味いです。美味いですうううう。


まくまくとチキンライスをほおばる母Yの視界の上部を横切る影が。
ベランダの窓際、エアコンのあたりから飛んで、台所のカウンターの壁に張りついた。
お父さん、なんかセミみたいなのが飛んできたよ。
時期的に早すぎない?
セミじゃない、ゴキブリだ」
えええええええ。
なんでなんでなんで〜〜〜〜〜。
母Yはメガネをかけていなかったので、よく見えない。
ていうか、よく見えなくてよかった。


速攻で新聞紙を丸める父J。
振りかぶって一撃。
のはずが、外れて逃げるゴキ。
ぎゃああああああ。
どこどこどこどこ?
「冷蔵庫に下に逃げた」
うそ〜〜〜〜〜〜。


冷蔵庫の隙間から殺虫剤を撒くも、反応がない。
し〜ん。
父Jも母Yも沈黙。
おいらは、虫という虫がものすごく苦手だ。
特にヤツらは、寒気がするくらいダメだ。
このままじゃ台所に近づけない。
洗い物もできないし、朝食の準備もできない。


バルサン、たきますかね?
「隣の部屋に、ふすま一枚隔ててゲンキがいるから不安だ」
う〜ん。確かにそうかもしれない。
ゴキブリホイホイ、買ってくるわ」
雨の中、午前1時前に出かける父J。


参ったなあ。どうしよう。
とりあえず、洗濯物は干そう。
台所の隣の洗濯室で洗濯物を取り出して、乾燥機をセットする。
洗濯室から出たところで、視界前方をダッシュする黒い影。
わああああああ。出たああああ。


あっという間に、ダイニングの長椅子の下に入っていったっぽい。
とりあえず、台所から出たなら、このまま追い詰めていぶりだそう。
台所側から、床下に殺虫剤を噴霧。
がさがさがさ。
わああああ動いてるよ動いてるよ出てくるなら出て来いつうの音だけじゃ不気味だわあああん。


し〜ん。
死んだのか?
いや、ヤツらは死んだふりが得意だから油断しちゃいかん。
とりあえず父Jにメール。
返事なし。
父Jに電話。
留守電だ。
何処まで買いにいったのさ〜〜〜。
メッセージを残して待機する。
その間も、適度に隙間から殺虫剤を噴霧。
し〜ん。
いや、絶対にこのあたりにいるはずだ。
ここで見逃したら、徹夜だぞ。
こうなったらヤツと根比べだ。


そうこうする間に父J帰宅。
メールも電話も気づかなかったらしい。
状況を説明する。
「わかった。長椅子よけていくから、しっかり見張ってて」
新聞紙を手に、慎重に捜索する父J。
母Yは手に殺虫剤を持ち、台所への再侵入を阻む。
「いないなあ」
父Jが新聞紙で椅子下を探りながら呟く。
でも絶対いるよ。見逃してないもん。追い詰めたもん。
今度は懐中電灯で捜索。
「いないなあ」
椅子下に潜りこんでチェックする父J。
頼もしい。


「あっ!」
ばしっ。
え、いたの?
「しとめた」
やった〜〜〜〜〜。
母Yがティッシュとビニール袋を渡し、手早く片付ける父J。
この連携は、過去に何度かヤツらと戦った経験から築き上げられたものだ。
この家に引っ越してからは、これで2度目。
ヤツらへの対策はしっかり講じているのだが、
どうも排気口から入り込んでくるらしい。
今回は、エアコンのダクトから侵入したっぽい。
こればっかりは、穴をふさぐわけにもいかないし。


それにしても、しとめられてよかったね。
侵入から、約1時間で騒動は幕を閉じた。
「あ〜、疲れた〜。これでやっと眠れる」
仕事で疲れていたのに、母Yにチキンライスを作ってくれて、さらにゴキ退治まで。
本当にお疲れさまでした。


あ、ラクカラーチャつうのは、スペイン語でヤツらのことです。
英語で言うなら、コックローチ。
ちなみに、ラクカラーチャって、メキシコ民謡のタイトルだったり。
昔は、よく暴走族のクラクションになってたよね。
みんな、絶対聴いたことあると思う。
リンクにある「なつかしい童謡」のページで歌と演奏が聴けるので、興味あるかたはどぞ〜。